幸福の庭

なかなか思い通りにならない人生を送っている50代。夢は庭付き一戸建て。

新宿の雑踏の中で

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会社は新宿にあり、毎朝、新宿大ガードをくぐって通勤しています。

大ガードの下って、昔から浮浪者のおじさん達のメッカですが、規制が厳しくなってから、以前ほど多くの人がいなくなりました。

そのトンネルの中も、二人とか一人とかが寝ているというような感じでした。

いつからか一人になって、そのおじさんが布団にくるまれて寝ている訳です。

コロナが流行り始めて、緊急事態宣言が出て、会社への出勤が減って、時々しか通らなくなても、そのおじさんはそこにいました。

緊急事態宣言が解けて、また前のように会社に行くことになったからも、そのおじさんは変わらずに、そこにいました。

そろそろ暑くなりだしたころも、布団にくるまれてそこにいました。

朝、毎日そこを通るのですが、おじさんは寝ていてビクともせずに、寝ています。

そのうち、布団をかけなくなって、寝ています。

毎日毎日、いろいろな人が通るところで、寝ていて「コロナ」にならないんだろうか?と心配していました。

本当に、動かないで寝ているので、もしかしたら、もう……このまま、なんて思って、そこを通るのが怖くて仕方がありませんでした。

ある日、いつものように通りかかった時に見ると、いつも寝ているところにそのおじさんの姿は、ありませんでした。

誰かが、通報したのか、やっぱりもうダメだったのかしら、と思っていたらところ、再びそこを通ったら、いたのです!そのおじさんが!!

おお、生きていたんだ!!すごいな、人間って強いんだな!と思っていました。

梅雨の終わりころには、いつも寝ていたおじさんは、壁にむかって○○をしていたり、立ったりして、以前の動かないころよりも元気そうでした。

長い梅雨が明けて、毎日、溶けるような暑さがやってきて、冷房がなければやっていけないような日々が続きました。

うちも今まで夜などは冷房を入れていなかったのですが、最近のこの異常な暑さで、一日冷房をかけっぱなししています。

朝から暑くて、大ガードを通る度に、こんなに暑い中、こんなところにいて大丈夫なのかしら?と心配していました。

といっても、何かできるわけではありません。ただ見ているだけです。

家の帰って、あのおじさんは大丈夫なのかしら?なんて話をすると、昼はどっか、冷房のあるところに行っているよ。なんていうのですが、そのおじさん、パンツ一枚での裸なのです。そのおじさんが、どこへ行けるというのでしょうか?

そんなある日、いつものようにそこを通ると、おじさんはいなくなっていました。

でも、前のようにまた戻ってくるかもしれない、と思っていましたが、それ以来、そのおじさんはそこに戻ってきません。

やはり、この暑さに負けてしまったのでしょうか?

会社の帰りにそこを通ると、荷物を置いて、そばに座っている人がいました。あの、おじさんかしら?と思ってみると、違うおじさんでした。

もう、あのおじさんは戻ってこないのでしょうか?

コロナも怖いけれど、熱中症も怖いです。